クローン携帯に関するITmediaの記事
最初に断っておくが、別にクローン携帯の存在を否定するつもりも、肯定するつもりもない。技術的な面から推測すると、理解に苦しむ点があるのでツッコミを入れたくなっただけである。
ITmedia(旧 ZDNET)に通信業界・禁断の謎に迫る:クローン携帯の可能性という記事があったので読んでみた。
自動車電話やアナログ方式携帯電話(第一世代携帯電話)のクローンに関しては、まあそのとおりかな、という気はする。
だけど
以降の文章については、正直なところ「ハァ?」と思わないでもない。
しかし、まだ手は残されている。例えば通常、携帯ショップに行って新端末を購入し、従来使用していた端末の電話番号を書き込んでもらう場合を考えてみたい。
先の文章の後には、こう続いている。
しかし、携帯電話を紛失した場合のことを考えてみると、これは変ではないか。
この場合、ショップの人間は電話会社の専用端末に接続して、番号の書き直しを行う。
携帯電話を紛失して新しい端末を紛失端末と同じ電話番号で利用する場合、確かに見た目上は同じ電話番号を持つ端末が複数存在することになる。しかし、他の電話機からその番号に対して電話をかけた場合、新しい端末に着信しなくては意味がない。
であるならば、携帯電話の端末は電話番号とは別にそれぞれが固有の番号を持ち、網側からはその固有番号で識別されている、と考えられる。しかもその固有番号は電話番号とリンクした形で網側の交換機に登録されている必要があるはずだ。
そう考えると、
というくだりは説得力に欠けるように思う。キャリアの交換機に必要な情報を登録できずに、どうやって
ここで、PCの扱いに長けた人なら、当然思いつくのが「CD-ROMによるバックアップ」。例えば、ショップの人間がアプリケーションを丸々コピーし、個人宅に持ち込めば、十分に作動する可能性はある。あとは、ネットワーク接続の部分をパッチしてやれば、“パーソナルキャリア”の出来上がりというわけだ。汎用のマシンを使っている以上、不可能とはいえないだろう。
ちなみに、クローン携帯の存在を肯定する方の中には、NTTドコモのデュアルネットワークサービスを例に挙げる方がいる。このサービスはFOMAのサービスエリアを補完するために、FOMAのエリア外でmovaを同一の電話番号で利用できるようにするためのサービスだ。
しかしこれを例に挙げるのは間違っていると思う。このサービスでは確かに同じ電話番号をもつFOMA端末とmova端末が存在する。しかし、このサービスでは同一電番のFOMA端末とmova端末を同時に利用することはできない。サービス利用者が、その場所で利用したい端末から1540をダイヤルすることで、網側の端末識別情報を切り替えているだけだ。
正直なところ、クローン携帯に関する議論はもう飽きた。仮にも技術屋の端くれとしては、クローン携帯が存在するのなら、単純な興味としてそれを見てみたい。そうすればクローン携帯に関するいくつかの疑問(ある電番でクローン携帯が作成されていて、オリジナルとクローンが発着信可能な状態で、その電番に他の電話機から発呼した場合にどちらが呼応するのか、など)は一瞬で解決してしまうだろう。