pslaboが試したことの記録

はてなダイヤリーからはてなブログに引っ越してきました

この日記は現在実行中の減量記録を含む個人的なメモとして始めましたが、最近はコンピュータやガジェット、ハック、セキュリティネタのほうがメインになっております。

はてなダイヤリー時代はカテゴリ分けが適当だったのですが、これはそのうち直します。


久々に「野口英世の名前を使う財団」を追いかけてみるテスト

野口英世の名前を使う財団」については以前から不定期にネタにしていたのですが、「米国財団法人 野口医学研究所」が「米国財団法人 野口英世記念財団」を訴えて逆に負けた裁判、東京地裁 平成 23(ワ)39771 の内容が判例として公開されているのを見つけました。訴訟が起こされたのは平成23年(2011年)だけど判決は平成26年(2014年)なので、古いんだか新しいんだか微妙なネタです。

※以下に登場する法人は名称が非常に紛らわしいことにご注意ください。そして野口英世の名前を使う財団の話を書くときは、これらを正しく使い分けることが大切だと思います。

そこで、あらためて掘り起こしてみます。ここで取り上げるのは以下の4つの法人です。どの名前も「野口英世」との関連性が想起されますよね。


では、まずは判決の引用から。

平成26年10月16日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成23年(ワ)第39771号 不正競争行為差止請求事件
口頭弁論の終結の日 平成26年9月9日
判決

 アメリカ合衆国 ペンシルベニア州<以下略>
 (日本における事務所 東京都港区<以下略>)
原告
 ノグチ メディカル リサーチ インスティチュート
 (日本における名称 米国財団法人野口医学研究所)

同訴訟代理人弁護士
 大谷 隼夫
 松阪 健治
 無津呂 幸憲
 宮口 裕幸

 千葉県鎌ケ谷市<以下略>
被告 A

主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。

以下略...

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/601/084601_hanrei.pdf

主文の通りですが、原告(野口医学研究所)側の負けですね。その後、控訴したかは未確認です。

この裁判が興味深いのは「被告も原告も、野口英世になんのゆかりもない」にもかかわらず「お前のやってることは、こっちのやってることと紛らわしいんじゃ、ボケェ」と原告側が吹っかけているのですよね。

そして吹っかけたほうが負けてしまったわけで、これはとても残念な結果。



ここから先は、前述の4つの法人についてのコメントです。

まず最初は本家から。

公益財団法人 野口英世記念会

世界的医学者・野口英世博士は1928年(昭和3)5月21日に西アフリカのアクラで自ら研究していた黄熱病に感染し、51歳の生涯を閉じた。同年6月29日に東京の日本工業倶楽部で開かれた追悼会後に「野口英世博士記念会」の設立が決められた。この記念会の事業として翌年には博士の生家の保存と二つの記念碑が建立され、青少年の健全育成と第二第三の野口英世を生み出そうと野口英世記念館の開館にむけての募金活動が展開された。多くの人たちの善意の募金が開始されて10年、1938年(昭和13)にようやく文部大臣より「財団法人野口英世博士記念会」の設立が認可されることになり、翌年5月21日の博士の命日には野口英世記念館が開館された。

http://www.noguchihideyo.or.jp/about/outline/

はい、これは間違いなく本家です。本当にありがとうございます。この団体以外は基本的には疑ってかかるべきだと思われます。

この法人は以下のURLにて定款や事業計画、予算書、財務諸表がちゃんと公開されてます。財団法人という名前の通りの運用が行われていますよね。
http://www.noguchihideyo.or.jp/about/



さて、ここから先の3つの法人はちょっと微妙。野口英世に縁もゆかりもない方々が、野口英世知名度に乗っかっているようにしか見えない、というのが率直な感想です。

野口医学研究所系列?

http://www.noguchi-net.com/
米国財団法人 野口医学研究所

http://www.noguchi-inc.com/
一般社団法人 野口医学研究所

株式会社野口医学研究所
特定非営利活動法人野口医学研究所

http://noguchi-shop.com/
http://www.morinoaraiko.net/
有限会社クリークコム(野口医学研究所サプリメント 公式サイトなど)

  • 「研究所」と名乗る割には研究内容がイマイチわからない。研究以外の事業はこんな感じらしいけど、コレジャナイ感が満載な気がします。http://www.noguchi-inc.com/index.html
  • 関係者が多すぎますよね。こんなに必要なんですかねえ? http://www.noguchi-net.com/gaiyou.html
  • 「品質推定認定事業」や「野口 金 コレクション」の認定品の認定基準が相変わらず不明。http://www.noguchi-net.com/cgi-bin/certificate/topics.cgi
  • 「寄附金に頼らずに運営している」そうです。で、財団法人なのに事業計画、予算書、財務諸表等はウェブでは公開されていない。へぇー、これで財団法人ねえ。。。
  • 医学の国際交流自体は素晴らしい事業の筈。ならば、ぜひとも「野口」の看板を外して勝負していただきたいような気がする。「野口英世」の名前は集客のためには非常に有効だと思いますが、「寄附金に頼らない」のなら「野口英世」の名前にあやかる必要はないと思います。また、なんだかんだと言っても30年も続いている法人ならば、関係者の間ではそれなりの認知度のはずでしょうから、そういう意味でも「野口英世」の名前はいらないんじゃないかと思います。
  • だけど「野口」の看板を外すことは多分ないだろうなあ。「野口英世にゆかりのある(かのように見える)アメリカの財団法人が品質を認定した商品」というスキームやビジネスモデルは「寄附金に頼らない」財団運営のために非常に大切なのでしょうから。
  • しかし、野口医学研究所の認定商品の中にはサプリメント等、野口英世の業績との関連性が感じられないものが多い。そもそも、医学研究所を標榜する団体がサプリメントを安易に認定品として推奨してよいのだろうか? 認定するとしたらどのような理由づけで認定するのか?
  • 「資格認定及び教本の監修」ってどうよ? http://www.noguchi-inc.com/service/shikaku_nintei.html
  • 「野口医学研究所 セラピー」で検索して出てくるページのコレジャナイ感。。。
  • Google検索でのネガティブキーワードは出てこなくなりました。しかし「胡散臭い」「詐欺」みたいなワードと併せて検索すると、まあ、いろんなものが出てきます。(私が書いた過去のページも出てきますが)

野口英世記念財団系列?

http://www.noguchi-hideyo.com
米国財団法人 野口英世記念財団(リンク先は Internet Archive の一番古いページにしてみました)

  • とっくのむかしにオワコンなので、追いかける意味はもうありませんね。
  • ただし、以下の会社名が判決文の中に出ているので引用しておく。

「被告が利益を受け,そのために原告に損失を及ぼしたか」
被告は,本件会社と共謀し,国際医学貢献活動への支援名目で,本件財団として,有限会社いとう商事,有限会社環境技研,戸倉工業株式会社,株式会社野生薬物研究開発センター,株式会社バイオテック,本件会社,株式会社野口メデックス,野口メディカルアシスタンス,株式会社サイバーネットソリューションズから,本件財団の表示又は別紙標章目録記載のロゴマーク(以下「本件ロゴマーク」という。)の使用を許可することの対価として,協賛金等の名目で,1社当たり少なくとも200万円を受領した。原告は,品質推奨等のために原告表示等の使用を許可する場合には,その対価として,1社当たり220万円を受け取っているから,被告は法律上の原因なくして合計1800万円の利益を受け,そのために原告にこれに相当する損失を及ぼしている。

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/601/084601_hanrei.pdf

なお、これらの社名の組織が実際にどのように関わっていたかについては、まったく調べていません。名前が一致しそうな会社はいろいろあると思うのですが、それだけで「完全に一致」と思い込んでしまうのは危ない。

野口英世医学研究所系列?

一般財団法人 野口英世医学研究所 歯科部会
http://hideyo-noguchi-mri.com/ というアドレスです。接続元IPアドレスによるアクセス制限がかかっているようなので、固定回線でコンテンツが閲覧できない場合はスマートフォンテザリングを試してみると良いようです。Internet Archive ではhttp://web.archive.org/web/20160306082521/http://hideyo-noguchi-mri.com/ の内容が確認できます。

さらに遡ると 2013年ごろまでは財団法人 野口英世医学研究所と名乗っておられました。さらにその前は米国財団法人 野口医学研究所 歯科部会だったと思われます。

  • こちらも「研究所」と名乗る割には、何を研究してるのかワカラン。
  • 主要なビジネスモデルは、歯医者さんに対して「インディアナ大学歯学部の認定医療機関」という肩書を付けてあげることっぽい。この実務には http://jip-iusd.com/ というドメインが使われている模様。これは「野口英世記念財団」が行っていた「5万円で認定書を出す」ビジネスモデルと大差なし。さすがにディプロマミルじゃないだろうから、それなりの認定基準を設けているとは思うのだけど。。。野口英世記念財団」は「5万円で認定書を出す」という、ディプロマミルまがいのビジネスモデルでした。おそらくはこれよりはマトモかもかもしれないが、インディアナ大学歯学部の認定というスキームの妥当性は素人には判断つかぬ。普通なら盲信するレベルだと思う。であるからこそ胡散臭い気がしてしまうのは何故だろうか。まるで「NASAが開発しました」の類のような箔付けに感じるんですけど。
  • 理事長代表理事脳外科医で神の手として有名な方。歯医者じゃないよ。どういうことだろう? 野口英世の名前だけでは飽きたらず、神の手の名前までも借りて権威付けしてるのか?
  • そもそも野口英世は歯医者じゃない。野口英世に対して歯科医の血脇守之助が色々援助していたというだけで野口英世の名前を使うのは無理筋。だったら血脇守之助の名前を借りるほうが筋が通っている。

ま、何が胡散臭いと感じるかというと、本家以外の方々は野口の名前をブランディングに使う気マンマンなところを胡散臭いと感じてしまうんですよ。本家以外の団体の主な収入源は野口英世の業績とは本質的に関係がないはずであるのに、そこに野口英世の名前が使われていて一人歩きしている感じ。