野口医学研究所のビジネスモデルに新しいバリエーションが登場したようなので追いかけてみるテスト
野口医学研究所でこれまでの品質認定のスキームに対して「野口プレミアム商品」というのが増えたようなので追いかけてみるテストです。
まずは以下のURLのご紹介。
http://www.noguchi-inc.com/premium/index.html
ページのデザインは「米国財団法人 野口医学研究所」と類似ですが、このURLは「一般社団法人 野口医学研究所」内にあります。なぜなのか。
さて「野口プレミアム商品」というタイトルがついてますが、併記されている英語表現は "Noguchi Premium Supplement" だそうです。ならば「野口プレミアムサプリメント」でええじゃないかと思うわけですが、これだと大切な野口英世の写真に文字が被ってしまったり、あるいはフォントサイズを小さくせねばならないので妥協したのでしょうか。
これがいままでの品質認定事業と異なるのは「自ら開発して販売する」ことのようです。これまでの「品質推奨認定事業」や「野口コレクション」は他社の製品に対してお墨付きを与えるというスキームですから、方針がちょいと違う。
さて、取り扱い商品は everyshop.jp というサイトで直販しているようです。このサイトは JTC という会社が運営しているようです。今回の商品群も JTC と野口医学研究所の共同開発という名目のようですから、ここにツッコミを入れる余地は多分無い。ちなみにJTCは福岡の会社のようですね。
http://everyshop.jp/_prozn/_system/hbuilder/list.php?pageid=6
商品を眺めてみると、サプリメント以外にもこんな商品があります。
http://everyshop.jp/_prozn/_system/shop/view.php?ca=|1|&gid=14105718497100
「ゲルマニウムタングステンブレスレット」ですか。。。野口英世の写真がバーン、ですよ。なるほどなるほど。で、商品説明を見ると「ゲルマニウムが生体電流の乱れを整える」とか「純度99.9%以上のゲルマニウムを使用しております。」だそうです。「……を改善、談話すると言われています。」という文言に至っては、『談話」に突っ込むべきか、それとも「言われています」という曖昧な表現に突っ込むべきか悩むレベル。ちなみに説明文は画像埋め込みなのでコピペできません。
そして商品名に含まれる「タングステン」については全く言及されていないのですけど,これはどういうことなんだろう。
ここで疑問なのは「ゲルマニウムやタングステンは果たして健康によいのか」ということでしょうか。
まずはゲルマニウムから。
国民生活センターが2009年に実施した「体によいとうたうゲルマニウム使用のブレスレット」のテスト記事はこちらでございます。
http://www.kokusen.go.jp/test/data/s_test/n-20090625_1.html
少なくとも2009年時点では「ゲルマニウムの健康への効果は、文献調査及び製造・販売業者に対するアンケート調査を実施したところ、根拠となる科学的データが確認できなかった」ということです。「効果がある」ことを証明するのは再現可能な事例を複数提示すればよいので簡単ですが「効果がない」ことを証明するのは無理ですからこのような表現にならざるを得ません。ならばこそ販売側は「……と言われています」のような曖昧な表現を用いるのではなく、再現可能な事例をエビデンスとして提示、掲示していただきたいところではあります。「研究所」を名乗る組織が関与するならば、研究に基づく結果を定時いただけると信頼性が増しますよね。薬事法の対象外の領域で薬事法に抵触しない曖昧な文言で商品を販売するのは「研究所」を標榜する組織のやることとしては不誠実な気がします。
また、明治大学科学コミュニケーション研究所様の疑似科学関連の情報サイトでゲルマニウムについて書かれているページはこちら。
http://www.sciencecomlabo.jp/health_goods/germanium.html
こちらでも総評としては『疑似科学」であると結論づけています。「科学」じゃなかったんですね……。
上記2つの情報から考えると、ゲルマニウムブレスレットなんてものは、医学研究所を標榜する組織が推奨したり販売したりするにはそぐわない製品のように思えます。
次にタングステン。タングステンのアクセサリーは金属アレルギーが起きない、なんて話も聞きますが、どうなんだろう。
タングステンについては信頼できる一次情報を見つけきれていないのですが、ヘルスデージャパンにこんな記事がありました。(リンク先は Wayback machine のアーカイブです)
金属タングステン曝露で脳卒中リスク増大の可能性(2013.11.25掲載)
これが本当ならば、ちょっとだけ嫌なカンジ。なお、ヘルスデージャパンの記事翻訳は、過去には「野口英世記念財団」も微妙に関わっていたとかいないとか。。。「野口医学研究所」は「野口英世記念財団」と訴訟を起こしていたこともあるわけで、ある意味これはすごいブーメランと言ってよいのだろうか。
結局のところ、「ゲルマニウム」や『タングステン」は健康被害が起きるリスクは低いが、逆に健康によいというエビデンスは現時点では確認できないと考えてよいのだろう。
なお、美容器具で「ゲルマニウムローラー」みたいなものもあるわけだが、あれはマッサージ器具であり、それが皮膚と接触する部分に溶出性が低い素材を使うのは正しい選択なので、それはそれでアリです。ローラーでマッサージすること自体の意味を判断するモノサシは私は持ち合わせていないのでなんとも言えないけど。
つぎに everyshop.jp というドメイン名自体にツッコミを入れてみよう。
Mac のターミナルで whois というコマンドでドメイン検索すると以下のような情報が得られます。(Linux の方は jwhois をお使いください。Mac も Linux も無い方は whois 検索が出来る web サイトを探していたただければと)
$ whois everyshop.jp Domain Information: [ドメイン情報] [Domain Name] EVERYSHOP.JP [登録者名] WHOIS.CO.,LTD [Registrant] WHOIS.CO.,LTD [Name Server] ns.withshop.co.kr [Name Server] ns1.withshop.co.kr [Name Server] ns2.withshop.co.kr [Name Server] ns3.withshop.co.kr (snip)
なるほど、ドメイン登録上のネームサーバは kr だから韓国のドメインですな。
しかし、DNSサーバに問い合わせしてみると...
$ host -t ns everyshop.jp
everyshop.jp name server ns.everyshop.jp.
everyshop.jp name server ns1.everyshop.jp.
everyshop.jp name server ns3.everyshop.jp.
everyshop.jp name server ns2.everyshop.jp.
ネームサーバの名前が違う。DNSの登録情報が微妙におかしい。一体だれですか、こんな素人仕事をしているのは。
さらにツッコミどころを探すために、everyshop.jp のIPアドレスを調べたり、逆引きを調べたり、あるいは whois でIPアドレス割り当て組織を調べてみることにすると、ご覧のとおり。
$ host everyshop.jp everyshop.jp has address 112.175.85.148 everyshop.jp mail is handled by 10 rmw-002.fmcity.com. $ host 112.175.85.148 Host 148.85.175.112.in-addr.arpa. not found: 3(NXDOMAIN) $ whois 112.175.85.148 (snip) % Information related to '112.160.0.0 - 112.191.255.255' inetnum: 112.160.0.0 - 112.191.255.255 netname: KORNET descr: Korea Telecom (snip)
IPアドレスはコリアテレコムですね。なるほどなるほど。JTC自体は住所が福岡でしたけど、福岡と韓国はとっても近いので、まあこういうことはあっても不思議ではない。JTCの取り扱い商品は韓国企業、または韓国資本の企業が製造している可能性がありそうですね。日本企業がやるなら、わざわざ韓国でサーバ立てることは、よほどのコストメリットが無い限りやらない。しかしコストメリットは多分無いよなあ。少なくとも Amazon Web Service の東京リージョンと韓国リージョンはインスタンス単価が変わらないのですから、その他のプロバイダで比較しても多分大差は無いはず。
とりあえず今回のツッコミはこれくらいにしておこう。