pslaboが試したことの記録

はてなダイヤリーからはてなブログに引っ越してきました

この日記は現在実行中の減量記録を含む個人的なメモとして始めましたが、最近はコンピュータやガジェット、ハック、セキュリティネタのほうがメインになっております。

はてなダイヤリー時代はカテゴリ分けが適当だったのですが、これはそのうち直します。


モバイルPASMOについて考察する

※考察内容は不定期に更新しています。

モバイルPASMOAndroid向けサービスに関するリリースが2020年1月に出てから、いろいろと期待が高まりますが、自分なりに現時点で考察した内容をまとめてみました。

当たるかもしれないし当たらないかもしれないけれど、こういうのは自分の推測した内容と実際の事実がどのように合致して、どのように合致しないかを照らし合わせてみるだけでも面白いと思うので、ざっくりまとめます。

ちなみに考察の中にはAndroidアプリ開発に関するキーワードも出てきますが、私はモバイルアプリ開発DelphiAndroid/iOSアプリを開発したり、Sencha Architect で Ext JS ベースのプロジェクトをCordova/PhoneGAPでビルドする程度のことしかしていないので、Androidアプリ開発はできるけど、がっつり開発しているわけではありません。

特殊な定期券はモバイルPASMOへの移行や利用は可能か?

たとえは、Suicaの場合は大人用の定期券をモバイルSuicaに移行できますが、通学定期券などは移行できません。これはモバイルPASMOでも同様だと考えられます。

http://appsuica.okbiz.okwave.jp/faq/show/1400?category_id=1&return_path=%2Fcategory%2Fsearch%3Fcommit%3D%25E6%25A4%259C%25E7%25B4%25A2%26keyword%3D%25E9%2580%259A%25E5%25AD%25A6%25E5%25AE%259A%25E6%259C%259F%25E5%2588%25B8%26page%3D2%26site_domain%3Ddefault%26site_domain%3Ddefault%26site_id%3D1%26sort%3Dsort_keyword%26sort_order%3Ddesc%26type%3Dsearch&site_domain=default

ただしこれは移行時の制限なので、新規発行についてはモバイルSuica同様に可能となると思われます。

これ以外の特殊な定期券としては、現状、東急電鉄のいちねん定期が挙げられます。金額には6ヶ月定期の倍額だし、他社線との接続定期は作れないので東急線だけで通勤が完結する方に向く定期券です。そして東急系のクレジットカードで購入するとポイントが多くつくので、そういう方向け。

いちねん定期自体はPASMOに定期券として載せられるので、モバイルPASMOにも技術的には問題なく載せられるはずですが、問題があるとしたら、モバイルPASMOの定期券発行処理に特定の鉄道事業者だけの有効期限の発行機能をつけるかどうかです。これはモバイルPASMOでは発行できないのではと推測しています。

他の特殊な乗車券はバス定期券だと思います。今回のモバイルPASMOサービス開始によりバス事業者も参入することが分かっていますので、定期券発行にも対応するものと思います。しかし一部のバス会社が通学向けに提供している学期定期券については対応の有無がまだわかりません。発行処理が事業者ごとに変わる可能性があるので、これも対応されるかどうか不明だと思います。

Android:モバイルPASMOモバイルSuicaを併用できるかどうか

たぶん不可能ではないかと推測しています。

まず、モバイルSuicaおサイフケータイの「鉄道・バス領域」を189ブロック使用する。しかし「鉄道・バス領域」は全部で345ブロックしかないので、モバイルPASMOを残り156ブロックに追加することはおそらくできない。

もし共存できるとしたら、モバイルSuicaとモバイルPASMOの両方で共通する部分、しない部分をうまい具合に管理して、モバイルPASMOで必要となる部分だけを残りの156ブロックに割り当てるという方法が取れる場合だろうと思う。

次に、Androidおサイフケータイには使用するカードを明示的に指定するモードがないので、2種類の交通系ICカードをインストールして使い分けるということができない。

おサイフケータイ領域の消費ブロック数問題とカードの明示的な切り替え機能の両方が解決したら併用可能になるかもしれないが、これはあまり期待できない。もしこれが実現するとしたら、おサイフケータイの仕様やGoogle Pay の機能変更を伴う対応が必要になるだろうから、すでにリリース済み端末ではこのような対応が行えず、利用可能な端末が新しい機種に限られるか、または旧機種向けと新機種向けで別アプリをリリースせねばならないだろう。容量の問題が解決でき、Google Payのアプリでどの交通系ICカードをアクティブにするかを変更できるようなアップデートが行われるなら実現の見込みがある。

この様な改修はコスト的にメリットがなさそうなので、このような変更は行われず、モバイルSuica/モバイルPASMOのいずれか1つだけをインストールできるという状況になると考えられる。

技術的な理由で共存ができないなら、よく使うカードどちらか1枚を登録せざるを得ないけど、乗車券としての機能のうち、モバイルSuicaで利用できる機能がPASMOでも利用できるようになれば実用上の問題がないので、おそらくそのようなサービス改訂が行われるのではないだろうか。たとえば、JR東日本モバイルSuicaJR東日本管内の新幹線に乗車できる「モバイルSuica特急券」は3/14以降はサービス改訂によりPASMOその他の交通系ICカードで利用できるサービス「新幹線eチケットサービス」に変わり、えきねっととe5489のサービスで予約できるようになる。このサービスはPASMOでも乗車できるからモバイルPASMOも利用できるはずなので、モバイルSuicaの利用者がモバイルPASMOに切り替えたとしても利便性は変わらない。

Android:鉄道・バス領域の容量の問題がなく、モバイルSuica導入済みの端末にモバイルPASMOを追加できるとしたら、使い分けはどのようになるか?

この仮定自体がおそらく無意味であり、SuicaPASMOは同時にはインストールできない可能性が高いが、使い分けが可能になるとしたらGoogle Payのアップデートによって可能となるのではと考えられる。Google Payは2015年以降に提供開始されているが、2015年というとAndroid 6がリリースされた年でもあります。そしてモバイルPASMOAndroid 6以降の端末が対象なので必然的にGoogle Payの仕組みに乗っかっている。ならばGoogle Pay側が使用する交通系ICカードの明示的な指定に対応しさえすれば切り替えは可能になる。

ここで疑問符が付くとしたら、Android 6向けのアップデートをGoogleがそもそもやるかどうかの話。AndroidバイスのOSバージョンのユーザー比率は最新よりも古いバージョンにピークがあり、シェアの高い順にバージョンを並べると 8→7→6→5の順に並びます。Google PayはAndroid 6以降で提供されていたと思いますのでモバイルPASMOの対応予定バージョンとも符合します。

具体的な数字でいうと、2020年2月時点のシェア率はこういう割合です。

バージョン シェア率
5 14.50%
6 16.90%
7 19.20%
8 28.30%
9 10.40%

もうちょっと正確なシェア率はこちらのダッシュボードで見れます。developer.android.com

さて、Google Playでアプリ公開する場合は現在は APIレベル28(Android 9)サポートが必要なはずなので、原則論から言えばこれから新規公開されるであろう、モバイルPASMOアプリはAndroid 9以降の端末しかターゲットにできないはずです。一方で Google Pay アプリはGoogle のアプリだし、既存アプリなのでこの制約は受けない。そしてモバイルPASMOGoogle Payアプリ側からみれば利用できるICカードの種類が増えるだけ(と言い切ってよいかどうかは微妙。。。)なので、無記名PASMOカードとして使う分にはGoogle Payアプリ側だけで対応できるのでしょう。

ただし新規公開アプリがAndroid 9をターゲットにせねばならない前提を厳密に適用するとAndroid6-8にはモバイルPASMOアプリが提供できず、カードを新規発行できるけど退会できないという謎仕様のサービスになってしまう。(少なくともモバイルSUICAを完全に止めるにはモバイルSUICAアプリからの退会手続きが必要)

そのように考えると、Google PayとモバイルPASMOアプリの両方がAndrod 6以降で正しく利用できるようにアップデートされるか、またはGoogle Payアプリ単独で交通系ICカードの退会手続きが行えるように改修されるのではないかと推測する。そうするとGoogle Payアプリでの交通系ICカードの切り替え利用の機能が含まれることも期待できる。

まあ、すべては共存できるかどうか次第なのですが。

iPhone:モバイルPASMOモバイルSuicaを併用できるかどうか

モバイルPASMOiOS向けに提供開始されるとしたら、モバイルSuicaと併用できる可能性がある。

そのように考える理由は、現状でもiPhoneでは最大3枚のSuicaが扱えることや、そのいずれかのカードをTouchID/FaceIDの認証なしに使えるエクスプレスカードとして設定できること。

iPhoneモバイルSuica対応は最大3枚のSuicaを登録できるため、複数枚のSuicaの使い分けを、仕事用とプライベート用、電車乗車用と買い物用などで切り替えているケースもあると思います。しかしこの機能は発行元が異なる複数のサービスに対応している可能性を考えたほうが良いと思われる。

もし、発行元が違う交通系ICカードを複数収容でき、そのどれかをエクスプレスカードとして指定できるなら、モバイルPASMO/モバイルSuicaの使い分けは適切に行うことが可能。

もしモバイルPASMOモバイルSuicaを同時に収容出来ないとしても、どちらかを排他的に登録することはできるだろうし、モバイルsuicaを端末から削除してAppleIDにバックアップし、モバイルPASMOを別途発行することができるのではと推測します。

iPhone向けのモバイルPASMOはいつごろ提供開始されるだろうか?

iPhoneモバイルSuica対応が明らかになったのは、iPhone7の製品発表(2016/9/8)の時であり、実際にサービス提供開始されたのは10月下旬でした。それより前の段階でiPhoneへのモバイルSuica対応の話は確定した情報としては全く出ていませんでした。

ここでPASMO/Suicaの2020年のタイムラインを少し整理してみると、次のようなスケジュールが見えてきます。2020年3月はモバイルPASMOの件だけではなく、モバイルSuicaでもサービス内容の変更が予定されています。だから2020年3月14日までに何らかの発表があり、2020年春(3/14以降)にAndroid/iPhoneの両方でモバイルPASMOが利用できるようになる、というのがもっとも可能性の高いスケジュールのように思えます。

時期 内容
2020年3月上旬 Android向けモバイルPASMOに関する詳細を発表予定 (このあたりでiPhone向けモバイルPASMO対応の発表も行われるかも?)
2020年3月14日 新幹線eチケットサービス開始に伴い、モバイルSuica特急券えきねっとやe5489で予約できるようになる。新しいサービスではPASMOでもJR東日本の新幹線を利用できるようになる
2020年春 Android向けモバイルPASMOサービス開始(Suica側の変更にあわせて3/14開始?)

日本では通勤通学定期券の買い替え時期が春と秋に集中しますから、この時期にAndroid/iPhoneのモバイルPASMOサービスを両方とも開始するのはサービスの垂直立ち上げという観点では理にかなっています。

しかし、一方で、あえてこの時期を避けてiPhone向けサービス開始を遅らせなければならない理由があるかもしれません。

iPhoneモバイルSuicaに対応した際も、多くのユーザが物理カードからモバイルSuicaへの切り替えを行ったことでトラブルがありました。多くのユーザがモバイルPASMOのサービス開始直後に物理カードのPASMOをモバイルPASMOに移行すると同じ問題が起きる恐れがあります。だからユーザー移行の時期を分散させたいという意向は当然あるはずで、このときにAndroidiPhoneでサービス開始時期を分ければユーザ移行のトラフィックは半分程度になると考えられますので、iPhone向けサービス開始をあえて後ろ倒しにするというのも十分に合理的な判断です。

またiPhone利用者がモバイルPASMOのためだけにAndroidに乗り換えるかというと、そうではなく、むしろアーリーアダプタな方がモバイルPASMO用の端末を買い足すのではないでしょうか。かく云う自分もSIMフリーおサイフケータイ対応Androidを所有しているので、どうしてもモバイルPASMOをサービス開始直後から使いたいならそちらにセットアップします。